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はじめに
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ジンベエザメのために海遊館ができること
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- 世界最大の魚類であるジンベエザメ。
実は、その個体数が世界的に減少していることをご存じでしょうか?
ジンベエザメは、IUCN(国際自然保護連合)によるレッドリスト(世界の絶滅のおそれのある生物種のリスト)にて、絶滅の危険が増大している種(Endangered)に分類されています。
このままでは、近い将来ジンベエザメがこの海から消えてしまう可能性があると言われているのです。
しかし、ジンベエザメの生態については謎が多く、具体的にどのように守っていけばいいのかはっきりと分かっていない状況です。
そのため、生息域や移動経路、個体数の把握をきちんと行うことが、ジンベエザメを守っていくうえで、重要であると考えられています。
海遊館では、長年ジンベエザメの飼育の他に様々な調査・研究を行ってきましたが、なかでも海での移動経路(回遊ルート)を把握するため「バイオロギング」という調査に力を入れています。
バイオロギングとは、ジンベエザメに小型の記録装置(データロガー)を付けて、どのように移動しているかを記録・解析する調査方法です。
しかし、データロガー機器自体や取り付けにかかる費用が高額であること、機器を付けておく距離・期間が長いほどデータの取得率が下がってしまうことなどが原因で、充分なデータ数が取れていないのが実情です。
そこで、今回のクラウドファンディングを通じて、取り付けるデータロガーの本数を増やし、さらに多くのデータを集めるとともに、長期間のデータ取得にも挑戦することで、ジンベエザメの生態解明、そして保全に貢献したいと考えています。
ジンベエザメの謎を解明し、絶滅の危機から守っていくことは、開館以来30年以上もの間、ジンベエザメに携わってきた海遊館の使命であると考えています。
ご賛同いただけるみなさまからのご支援を心よりお願い申し上げます。 -
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これまでのバイオロギングの結果と課題
- ジンベエザメを絶滅から守るためには、生息地や回遊ルート、個体数の把握等様々なデータが必要になります。
しかし、海外を中心にわずかな報告があるのみであまりデータがなく、特に日本近海の回遊ルートについてはほとんど情報はありません。
海遊館では、2011年から、高知県で定置網に迷い込んだジンベエザメや海遊館から放流するジンベエザメに小型の記録装置(データロガー)を装着し、データ収集と解析を行ってきました。
データロガーは装着時に設定した期間が経過すると自動でジンベエザメから外れて、海面に浮かぶ仕組みになっており、浮かんできたデータロガーが人工衛星を介して、海中でため込んだデータを一括で転送し、そのデータを解析することで、回遊ルートを特定しています。 -
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- これまでに実施した調査では、高知県土佐清水市を出発したジンベエザメが、東北や千葉県の沖へ回遊していることや、水深1,800mよりもさらに深い深海域を泳いでいることなどが確認できました。
2015年に実施した6ヶ月間の回遊ルート調査では、高知県土佐清水市を出発したジンベエザメがフィリピン海域まで南下したことなどが分かっています。 -
- このように長い期間データロガーを付けていると、より多くのデータを得ることができ、回遊ルートの解明につながります。
今後の調査においても様々なデータを基に、検証を重ねていくことで、ジンベエザメを守るうえで重要な海域の特定につなげていきたいと考えています。
しかし、実験や調査には課題がつきものです。
データロガーは、取り付ける期間が長ければ長いほど、データロガー本体の水圧による故障や海藻類の付着等による様々なトラブルが起きる可能性が増え、成功率が低くなります。
そのため、よりデータロガーの装着回数や個数を増やし、サンプル数を少しでも多く集める必要があるのですが、機器を装着できる機会(ジンベエザメ)が限られていること、また、ロガーの機器自体が非常に高額であることなどから、これまで慎重に進めざるを得ませんでした。 -
クラウドファンディングで実現したいこと
- データのサンプル数を少しでも多く取得するために、1つでも多くのデータロガーが必要です。
また、みなさまのお力により、多くの資金が集まれば、データロガーをより多く準備する事ができ、データを取得するチャンスを増やすことができます。 -
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ご支援いただいた資金の活用方法
- みなさまからご支援いただいた資金は、下記の通り活用させていただきます。
・データロガー購入費
・データロガー装着にかかる作業費等
・その他バイオロギングにかかる諸経費
また、今後の調査では、より高い確率でデータを回収し、学術的な成果発表を行うことを目標とし、まずは短期間の回遊ルート把握に努めたいと考えています。
そして、短期のデータが充分に集まった段階で、長期のデータ取得にも挑戦する予定です。
このことから、まずは以下の通り目標を設定しました。
目標①:1ヶ月間の回遊データを3個体分取得する。
目標②:3ヶ月間の回遊データを2個体分取得する。
目標③:6ヶ月間の回遊データを2個体分取得する。
上記を踏まえて、今回クラウドファンディングの目標金額を500万円にしました。
これを達成すれば、目標①の、1ヶ月のデータを充分数取得することが可能となります。
もし、目標金額を超えてご支援をいただいた場合は、目標②、③へと進み、長期間のデータ取得へも挑戦してまいります。
ジンベエザメの生態解明、そしてジンベエザメを絶滅の危機から守るために、ご支援いただけますと嬉しく思います。 -
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海遊館が調査・研究を行う理由
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海遊館の使命
- 水族館には、レジャー施設としてお客様を楽しませる「レクリエーション」以外にも、「種の保存」「調査・研究」「教育」という4つの役割があります。
このクラウドファンディングを通して、ジンベエザメの回遊ルートの「調査・研究」に貢献し、ジンベエザメの「種の保存」を図っていくとともに、これを見ているみなさまにジンベエザメの現状や海遊館の研究内容を知っていただく「教育」のきっかけを作れたことは、水族館の役割を全うするという意味において、非常に大きな意味を持ちます。 -
- 「すべてのものは、つながっている」
これが、設立当初から変わらない、海遊館のコンセプトです。
そのつながりを守り、人と生き物たちとの懸け橋であるよう、私たちは日々歩みを進めています。
今回のクラウドファンディングを通して、皆様と一緒にこの使命を果たしていくことができれば、これほどうれしい事はありません。
私たちの取り組みにご賛同いただけましたら、どうかあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。 -
(参考:海遊館の研究施設「海洋生物研究所以布利センター」)
- 1997年9月24日、海遊館の付属施設「大阪海遊館 海洋生物研究所以布利センター」を
高知県土佐清水市以布利(いぶり)に開設しました。
以布利は海遊館で飼育展示している多くの生き物たちのふるさとであり、生き物の収集と飼育だけでなく、周辺海域の調査研究を行っています。
また、専任の飼育員が、以布利センターならではの研究活動を行っており、ジンベエザメやイトマキエイなどの大型魚類の生態研究などで実績を残しています。 -
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メッセージ
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- ジンベエザメのことをもっと知りたい。
地球で最も広大な海“太平洋”を回遊し、いろんな地域を通って日本沿岸を訪れるジンベエザメ。
その姿は雄大で、太陽が差し込む海中を、なめらかに泳ぐ姿は、美しさと生命の尊厳を感じさせてくれます。
多種多様の生命を育んできた海、そして地球の美しさと面白さに、興味が尽きることはありません。
ジンベエザメが行う地球規模の回遊生態を調べ、未来に向けて脈々と命のリレーを続けていくことが出来るよう配慮していくことは、地球規模の環境を考えることにつながると思います。
しかしながら、ジンベエザメの暮らしについて、私たちはまだ知らない事ばかりです。
それどころか、どのような方法で調べればよいのかさえ、わからないこともたくさんあります。
海遊館だけで出来ることは多くなく、さまざまな分野の方々と協力し合い、一歩ずつでも前に進み、探求を続けていきたいと思っています。
また、日本に限らず、ジンベエザメが暮らす地域の方々と共に、この課題に取り組めたらと願っています。
海の中のこと、遠い地域で起こっていることは実感しにくいかもしれません。
しかし、ジンベエザメの暮らしを想像することで、多くの人の気持ちがつながり、この美しい海と地球、そして生命を、将来の世代に届けていきたいと思います。 -
- ジンベエザメにロガーを取り付ける作業は、定置網に入網した時や、放流の時に限られるため機会が少なく、漁師さんの協力を得て成せることです。
さらにロガーは高価なものでその意味でも機会が限られます。
調査期間終了日にドキドキしながら調査データへアクセス。
「あがった―!!!!」受信されたデータをみるとつい声をあげてしまいます。
そして係員室にいるみんなが待ちわびたデータをみるために席を立ちわらわら集まってきます(笑)
私は初めてデータが回収された時は、その遊泳進路に「ふむふむ」、遊泳水深を見て…「え?マジで???」。
ジンベエザメってこんなサメだろうという勝手なイメージが覆されとてもわくわくしたことを今でも覚えています。
なぜジンベエザメは日本近海に回遊してくるのでしょうか?日本の海の魅力ってなんだろう?日本の海に来るのはジンベエザメにとってなにか大きな意味があるのでしょうか。
ロガーを通し、ジンベエザメの本当の姿を知り、ジンベエザメを、自然環境を、守ることに繋がっていくとしたらとても素敵なことですよね。
クラウドファンディングにより、みなさまと一緒にわくわく出来たら嬉しいです。 -
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応援メッセージ
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- ジンベエザメは暖かい海にすみ、世界中を泳ぎまわっています。
このサメは地球で最大の魚類ですが、あの巨大な体と愛らしい姿形、穏やかな性格、そして美しい体色などで最も人気者のサメといっても良いと思います。
今ではこの巨大ザメの姿を近くの水族館で、すぐ目の前で見ることができるようになりました。素晴らしいことです。
しかし、狭い水槽内で観察できるのはジンベエザメの生活のごく一部分だけです。
分かっているのは、ジンベエザメが太平洋・大西洋・インド洋のどこかで生まれ、どこかを回遊をし、どこかで餌を食べ、どこかでオスとメスが出会って交尾し、どこかで300尾ほどの子供を産むという事実です。
つまりジンベエザメの生活は何にも分かっていないのです。
そこで、この中の“どこを回遊して”いるかを明らかしたいというのがこの研究の目的です。
日本近海に来たジンベエザメがどんな生活をしているか、その謎の一部が分かったら良いですね。 -
- これまでの学術的コラボにより、遺伝子情報について世界に先駆けた研究が可能になり、成果発表の際には海遊館の施設で記者会見までさせていただきました。
水族館が貢献しうる生命の謎解きとして、今回の挑戦を私も応援しています。 -
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- 謎の多い海洋生態系の中でも、特に大型生物については知見が乏しく、生態を理解し共存をはかるためにはまだまだたくさんの研究が必要です。
本クラウドファンディングでは、ジンベエザメの回遊経路解明のための調査実施を目的としていますが、ジンベエザメはかなり広い海域を回遊すると考えられ、本プロジェクトで適用予定のバイオロギングによる研究が不可欠だと思います。
ジンベエザメについては、以前は報告がなかった海域での発見も増えており、地球温暖化の影響が懸念されるため、早急に調査が必要です。クラウドファンディングの成功を願うとともに、この機会に皆様が海のことについて考えるきっかけになればいいなと思います。 -
- ジンベエザメのような大型の海洋動物は、人々の感心を集める一方で、その生態はほとんどよくわかっていません。
本プロジェクトのジンベエザメの回遊経路の解明は、彼らを保全する上で必要な情報となります。
例えば、回遊時期と経路がわかれば、その時その海域での漁業活動を制限することで、ジンベエザメが漁網に絡まる事故を未然に防ぐことができます。
本プロジェクトは、調査研究といった非常にチャレンジング且つ魅力的な内容です。
多くの人にジンベエザメを通じて海洋生態系に興味を持ってもらえることを期待しています。
ジンベエザメの生態の理解を深め、効果的な保全活動を実施するためにも、みなさまからのご支援をお願い致します。 -
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- 幼い頃、「ジンベエザメ」と初めて出会った思い出の場所、それは海遊館でした。
今年、太平洋水槽の前で描いた作品は、複数の「海」という文字を書き、サメやその周りの魚たちが光を受けて泳ぐ泳跡を表しました。
そして何億年も前から生きている多くの魚たちが太古の昔から泳ぎ続けてきた美しい海を守っていきたい。そんな強い願いを込めて、大きく「美」という文字を書きました。
昨今、海の生態系が人間の行いによって崩れ、海洋汚染は重大な問題となっています。私の愛する鮫や魚たちがいつまでも優美な姿で泳いでくれるよう、海を守りたいとその思いは年々強くなっています。
ジンベエサメの生態解明は、美しい海を守る上でも重要な役目を果たしてくれると信じています。
今回のクラウドファンディングへ大いなる期待を込めて。 -